06 Junその日

海沿いの崖から目の前に広がる海を見た時、
私はほとんど即断で此に住もうと決めた。

これもまた 乱暴とも云える決断で仕事を辞め、
いいかげんに覚えたフランス語をもう一度勉強するという
言い訳めいた理由を掲げてパリに来てから一年が経っていた。
その日、友人夫妻にに連れられ、そこに立ったその時、
今まで一度も足を向けたことがなかった、と初めて気が付いた。
全て見たと思っていたフランスなのに。

私にとってノルマンディは、ほとんどの日本人が持っているであろう
「第2次世界大戦時の連合軍の上陸の地」という
暗いイメ−ジでしかなかったからだ . . . 。
長く続く切り立った白い崖下に広がる海は
あまりにも明るく静かに私を迎え入れてくれた。

たぶん私は自分でも意識しないまま 永住の地を探していたのだと思う。

私の住む所は、ディエプに近い人口わずか三百五人の小さな村。
この数は夏のヴァカンスシーズンには5倍に脹れ上がる、
言わば、避暑地だ。(マイナーな)
私の家は崖の上にある平坦地の一角、防風林で囲まれた小さな集落の
十一軒のうちの一つだ。海へは急な坂を5分も下れば出られる。
海岸には古びたホテル・バ−が一軒あるだけだ。
夏はパン屋の売店やレストランが2・3軒店をひらくだけの
あくまでも素朴な田舎の海岸でしかない。

DIEPPE(ディエプ)

パリから250キロ北西に行った港町。ル−アン、ル・ア−ヴルに次ぐ
セイヌ・マリチム県第三の都市。イギリスに行くフェリ−が出ている。
人口はわずか二万五千でしかない。

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